オゾンと光化学オキシダントの違いについて
 
 
 最近、光化学オキシダントとオゾンを混同して扱う議論が増えている。原因の一つとされる平成8年の環境省告示の意味は、「観測されたオゾン濃度指示値を光化学オキシダントの濃度としてもよい」ということである。しかし、実際には光化学オキシダントの濃度とすべきところが直オゾンの濃度と誤用されている。オゾンはあくまで単一の化学物質であり、光化学オキシダントは光と排気ガス中の有機物成分との相互作用で生じたエアロゾルである。エアロゾルの成分は有機物の濃度や種類、日照条件等によって大きく変化する。オゾンは指標の一つにすぎない。
 
 光化学スモッグがはじめて問題になったのは1955年7月のロサンゼルスである。快晴にもかかわらず視界がぼやけ、目や喉の不快感を訴える人が急増した。後の研究で、原因は自動車の排気ガスと紫外線によって引き起こされたいわゆる光化学スモッグであることがわかった。 日本では、1970年7月に杉並区の高校で女生徒が目の痛みや頭痛を訴えて倒れ、病院に運び込まれる事件が起きた。その後日本の各地で同様の被害が報告されている。しかし、オゾンは名前が「臭い」というギリシャ語に由来するほど臭いが強いが、これまでに臭いを感じたという報告は見られない。臭いが感知できない濃度で障害が発生することはオゾンに携わってきた者には極めて考えにくい。
 
 冬に発生する本来のスモッグは亜硫酸ガスと霧が結合したものであるが、スモッグの毒性は亜硫酸ガス単独の場合の10倍以上にも達することが知られている。光化学スモッグの場合にもミストが鍵を握っている可能性も考えられる。科学は事物を分類することから進歩した。オゾンとオキシダントとを区別しない情報の氾濫は関係者にとっては迷惑な話である。なお、「オキシダント」は、中性よう化カリウム溶液からよう素を遊離するすべての酸化性物質の総称、そこから二酸化窒素を除いた物質が「光化学オキシダント」と定義されている。
 
徳山大学学長    
日本オゾン協会理事   杉光英俊
 
 
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